Institute for Applied Mathematics and Sciences
応用数理科学研究所
研究所長
研究所概要
温暖化に伴う地球規模での気候変動によって,自然生態系への悪影響や我々の社会環境に様々な災害をもたらしていることは改めて言うまでもない.その主要因は温室効果ガスの放出によるものであり,本質的には,エネルギー供給と消費に関わる問題である.気候変動によって直接的にもたらされる問題は,豪雨や台風などに代表されるような大気循環,海流や気象などの自然現象に関わるものであり,科学として取り組むべき課題としては,これら現象のモデル化,及びそれに基づく予測と制御,エネルギーフローの最適化といった内容に絞られる.気象,海流や大気循環の現象の理解には,身近なスケールから地球規模のスケールまでを含む物理現象のマルチスケール性,また,系の非線形性によってもたらされるカオス的な複雑性や,連続体としての振る舞いに加えて物質移動を伴う非平衡熱力学との連成を考慮する必要がある.さらに,ミクロスケールで発生する相変化はマクロスケールでは特異現象として現れるため,ミクロとマクロを時空間の繋ぐ大規模な構造で捉える必要がある.このような問題は,古典物理,とくに流体力学や熱力学といった連続体力学と古典場の理論と,それらを記述する解析力学や統計力学を基礎としており,数学的にはリー群などの多様体上の非線形無限次元力学系として扱われてきた.しかし,従来の数理的なアプローチでは,物理現象を個々の要素へ分解して単純化し,その数学モデルを構築することで解析する手法が 取られてきた.しかし,現実に存在する複雑な現象を正確に捉えることは困難であり,いわゆるマルチフィジックスとしてのモデル化が不可欠となる.さらに,ミクロとマクロを繋ぐマルチスケールな数理とともに,実際の現象や実験による膨大なデータから大規模システムとしてのモデル化を実現し,最終的なアウトプットとしての予測や制御,エネルギーフローの最適化を目指す必要がある.その基盤技術は数値解析と工学的な最適設計であるが,確率微分方程式,構造保存型計算やネットワーク理論などの離散数学が数理的なフロンティアとして広がっており,AI,機械学習や情報幾何といったデータサイエンスなど最新の計算科学の開発との融合が不可欠となる.本研究では,これらの諸問題に対して,数理科学の立場から様々な分野の専門家によって組織的な研究に取り組み,解決を目指すとともに新たな価値を創出することを目的とする.
メンバー
吉村浩明 | (理工学術院教授) |
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伊藤公久 | (理工学術院教授) |
小澤徹 | (理工学術院教授) |
小薗英雄 | (理工学術院教授) |
ゲストマーチン | (理工学術院教授) |
柴田良弘 | (理工学術院教授) |
齋藤潔 | (理工学術院教授) |
佐藤哲也 | (理工学術院教授) |
滝沢研二 | (理工学術院教授) |
宮川和芳 | (理工学術院教授) |
ジャンネッティニコロ | (高等研究所准教授) |
渡辺昌仁 | (理工学術院助手) |
牛奥隆博 | (理工学術院助手) |
ニュース
2021年12月 | 渡辺昌仁助手と吉村浩明教授がASME(米国機械学会)FEDSM2021(流体工学部門講演会)で,Flow Visualization Competition 優秀賞を受賞しました. |
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2021年12月 | 牛奥隆博助手と吉村浩明教授がASME(米国機械学会)FEDSM2021(流体工学部門講演会)で,Best Presentation Awardを受賞しました. |